認知症介護に特化したキャリア形成のプロセス

日本には職人がその道の達人になるためには10年の歳月が必要という格言があります。つまり、知識やスキルを身につけるためには、努力と時間が必要ということです。

介護職の中でも認知症ケアのキャリア形成では、認知症ケアの専門性を高めていく領域はもちろん、一人の社会人として人間性を深めて、リーダーとしての能力を習得していく領域とがあり、これらは時間をかけて身につける必要があります。前者は6段階で形成されており、介護職は認知症介護のプロフェッショナルとして、どんな状況下に置かれた認知症患者に対しても、的確な問題解決ができるようにならなければなりません。最初は介護職員初任者研修などを通して認知症に関する知識とスキルを学び、それを現場で活かしつつ、自己研修や上司のアドバイスを受けながら、経験を積んでいきます。

そして、5年前後のキャリアを積むと、認知症患者に対して個別に対応する能力を身につけるために、BPSDに対する適切な対応や原因を把握して、ICFの理論に基づいた対応を集合研修などで学びます。さらに、7年前後になると行動や心理状態には身体的なことや環境的な要因が認知症の進行に関係していることが現場を通して理解できるようになるので、ここでようやく一人前と言えるようになるでしょう。

このように、介護の分野においても、一つの道を極めようとすると、かなりの時間はかかります。しかし、一度手にしたキャリアは、介護の仕事を続ける限り大きな武器になるので、ぜひとも長いスパンでプロフェッショナルを目指してほしいと思います。